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KRUK-1003
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ノラオンナ 1st mini Album
『少しおとなになりなさい』
disc review
音楽ライター兼シンガー・ソングライター
中川五郎
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「ノラオンナの歌の魅力を最大限引き出す最小限の音」
たった四本しか弦のない小さなウクレレをポロポロと爪弾きながら、濃密でスケールの大きなラブソングを歌うノラオンナのライブを初めて体験し、衝撃を受けたぼくは、その直後に次のようなライブ・レビューの原稿を書いた。「ノラオンナが持っている柔軟で豊穣な音楽的バックグラウンドは、ウクレレ一本の演奏からでも十分に伝わってきた。そんな彼女の音楽がいざレコーディングされるとなると、つい『ゴージャス』で『カラフル』なアレンジが施されたりしてしまうものだが、ぼくとしては、『less is more』の精神を忘れることなく、その美しいミニマリズムの世界がアルバムでも最大限活かされますようにと願うばかりだ」
ぼくが初めてノラオンナのライブを見たのは、2003年3月17日に行なわれた風待レコードのイベント、風待フラッグの第一回でだったから、もう一年以上も前のことになる。そしてこの4月21日にようやく風待レコードでのノラオンナの最初のCD、『少しおとなになりなさい』がリリースされることになった。「流れ星」や「パンをひとつ」、それに「少しおとなになりなさい」など、ぼくがその時のライブで聴いた曲も入っている5曲入りのミニ・アルバムだ。
実は一年前にノラオンナのライブ・レビューの原稿を書いた時、ぼくは彼女がレコーディングをする時は、ライブと同じようにウクレレ一本の弾き語りでやればいいと思っていた。そのスタイルこそが彼女の歌の世界を最も正直に、しかも表情豊かに伝えていると確信していたからだ。そしてまわりはきっとそんなやり方をしないだろうということもわかっていた。レコーディングとなると、アレンジをしたりいろんな音を加えるのが、この世界ではほとんど常識となっているからだ。
リリース前に早速届けてもらったノラオンナのCDに耳を傾け、ぼくは自分の予想が見事にあたっていたことを知った。ノラオンナのミニ・アルバムは、ピアノやギター、ベースやドラムス、パーカッション、それにストリングスなど、さまざまな楽器が加わってレコーディングされていたのだ。そちらのほうの予想は適中したが、もうひとつのほう、すなわちぼくがノラオンナのレコーディングに関して考えていたことは、見事なまでにはずれていた。ミニ・アルバムに収められている5曲のアレンジや演奏は実に素晴らしく、ウクレレ一本でも十分にすごいノラオンナの世界やその魅力を少しも損なうことなく、そこに光や影、潤いや乾き、微妙な色合いや肌合い、深みや広がり、温度や湿度を与え、彼女の音楽を「増幅」させることに成功していたのだ。
そして何度もCDを聴き返すうち、ノラオンナのレコーディングに参加したアレンジャーやミュージシャンもまた、彼女と同じように「less is more」の精神を知りつくしている人たちではないかとぼくには思えてきた。つまり彼らが作る音、奏でる音は、ノラオンナの歌を単にデコレートしたり、コーティングしたり、派手なものにしたり、ましてやミュージシャンとしての自分がでしゃばるためのものなどではまったくなく、彼女の歌の魅力を最大限引き出すために選り抜かれた、必要最小限の音ばかりなのだ。そこに流れている凛々しく厳しい音は、「ゴージャス」や「カラフル」の対極に位置するものだと言ってもいい。
ミニ・アルバムの中の最初の3曲、「流れ星」、「少しおとなになりなさい」、「パンをひとつ」は、かつてthe REDSやMARQUEE MOONといったロック・バンドで活躍していた大平太一がアレンジを手がけている。ノラオンナのウクレレこそまったく登場してこないが、それらの曲で聴けるピアノやアコースティック・ギター、ベースやパーカッション、それにバイオリンやチェロの音からは、ノラオンナがウクレレを爪弾く時に込めているものと同じ、ときめきやパッション、緊張感が伝わってくる。それはまさしくアレンジャーの大平太一がノラオンナの音楽を正しく理解し、彼自身がそれと一体化しているからだとぼくは考えている。
いつものようにウクレレを弾きながら歌うノラオンナに、パーカッションやギター、ピアノやベースが絡む「タバコ」や「スリーピングボーイ」にしても、ウクレレ独り歌いのノラオンナの魅力をより豊かなものにこそすれ、邪魔をしたり、違う方向へと導くような結果にはまったくなっていない。(「タバコ」はneumaの菅沼雄太、「スリーピングボーイ」はneumaの守屋拓之がアレンジを担当)
ウクレレ一本だけのノラオンナの切り詰められた、それゆえに大きな広がりを見せる世界も大好きだが、そこに正しい音が結びついた時に生じる新たな魅力をぼくはこのミニ・アルバムでたっぷりと教えてもらった。音楽って面白いし、不思議だし、いつも鮮やかに人の予想を裏切り、そして何よりも正直なものだいうことをノラオン
ナのCDで改めて学び、ぼくは少しおとなになった気分がしている。
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