季節の松本 第11回「アニメソング(後編)」

インタビュー・構成:水島己


松本隆のアニメの原風景
『スプーンおばさん』は誇れる仕事
ナウシカとラピュタでジブリに嫌われた!?
角川春樹さんからの依頼
人の心に残るというのが大事






ナウシカとラピュタでジブリに嫌われた!?

松本

「ナウシカ」は最初、劇中のサウンドトラックもすべて細野さんがやる予定だったと思う。主題歌も平行して作っていたんだけど、サウンドトラックのほうは僕は関係ないから良く知らなかった。でも、半分くらい進んだあたりで、細野さんが喧嘩して降りちゃったみたい(笑)。

――

最初に細野さんに依頼したのも、三浦さんだったんですか?

松本

おそらくね。でも細野さんも譲らない人だからさ、たぶんぶつかっちゃったと思うんだ。何か揉めたらしいという噂だけは耳に入ってきたんだけど、細野さんは傷ついているだろうと思って何も訊かなかった。だから今でも何があったかは知らないんだ。まぁ、安田成美さんのプロモーションは、僕から観ても結構強引なやり方だったと思っていて……売り方のレールがすごくはっきり敷かれていた感じだから。宮崎駿さんとかはすごく嫌がるんじゃないかなと思う。それまで歌ったこと無い人に歌わせたわけだし、本人にしても「なんで私が……」って気持ちはあったと思うんだよね。

――

とにかく、それで細野さんが降板された。

松本

代わりに音楽が久石譲さんになって、結局、その後のジブリ作品の多くを手がけるようになった。だから久石さんにとってはラッキーチャンスだったね。仕事って何が起こるか分からないし、人の運命も少し先のことでもどうなるかなんて分からないんだ。

――

今となっては細野さんの「ナウシカ」も聴いてみたかったですが……。

松本

細野さんがやってたらあんなにヒットしなかっただろうと、友人の僕は思う(笑)。でもそうやって「ナウシカ」のシングルが、本編に入らないイメージソングという形になったというのは、僕としては面白かった。というのは、アニメの主題歌ってビジュアルの印象が強いから、なかなか曲としては独立できないんだ。「ナウシカ」の場合は、本編に入っていないということで、いい黒歴史になったというか(笑)。伝説度は増したよね。

――

確かに、この曲はいまだに印象が強いですね。

松本

同時代の人にとってはそうかもね。面白いのは、今の10代、20代の人が
ジブリのDVDを買っても、この曲は入っていないわけ。ジブリはスミ塗っちゃったわけだから。でも松本=細野のこの曲は、確実に存在してるんだよね。

――

人の記憶の中にも残り続けていますね。

松本

ただ、次の『天空の城ラピュタ』のときも全く同じパターンでさ、僕は徳間のほうから頼まれるから作るんだけど、同じこともう一度やるのか……って思った(笑)。今度は筒美京平さんと一緒にラピュタのイメージソングを作るんだけど(小幡洋子「もしも空を飛べたら」(1986年))、京平さんはものすごく現実的な人だから、ああいうファンタジーの世界へは理解を示さないんだ。だからこれもうまく行かなかった。これは松本の黒歴史だね(笑)。ただ、僕はラピュタは映画としてすごく好きなんだ。

――

傑作ですよね。

松本

僕はこの件があってから、ずっとジブリに憎まれたと思ってたんだ。でも『千と千尋の神隠し』(2001年)を観たら、(はっぴいえんどの「風をあつめて」(1971年)で歌われた)“海を渡る路面電車”が出てきて、好きな人も居るのかなと思ってちょっとほっとした(笑)。

→ 4.角川春樹さんからの依頼 を読む



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