「東京の12月の雨の日」
執筆:草野マサムネ (ミュージシャン/スピッツ) |
「曖昧の森」
執筆:アイコ(advantage Lucy) [ミュージシャン] |
「もしも次の日曜が雨降りだったら」
執筆:MAYA from West End(フォトグラファー、ライター) |
「12月の魔法」
執筆:sato-C(アルチザン、DANCER) |
「『十二月』タグの思い出」
その気持ちが本当に必要になった時、そのタグを使って、大事な気持ちをそっと呼び起こすのだ。
執筆:永川成基(ストーリーライター/ゲームデザイナー) |
『12月の鍋の日』
韓国では鍋を年中よく食べるが、冬にはその割合が断然多くなってくる。ソウルに住むようになって知ったのだが、日本でチゲ鍋という呼び方があるが、韓国語でチゲ=鍋なので変な表現だ。そして韓国料理の鍋って、実はすごく沢山あるんだということも知った。チゲ、チョンゴル、タン、クク、トゥッペギなど、「鍋」や「煮込み」などを表す言葉にこと欠かない。鍋は韓国のテレビドラマなんかでもよく出てくるが、そこには文字通り様々な物語が詰まっている。 スタンダードなキムチチゲ。ソーセージやスパムなど軍の放出品が発祥のジャンクな美味しさが素敵なブテチゲ。独特のくさみがあり日本のみそ汁に近いテンジャンチゲ。豆腐がメインのヘルシーな(でも辛い)スンドゥブチゲ。豚の骨付きあばら肉をとジャガイモを鍋からはみ出すほど積んだワイルドなカムジャタン。牛を煮込み白濁した繊細なスープに素麺が入ったシンプルなソルロンタン。鶏を骨ごと甘辛く煮込んだ家庭的な美味しさのタットリタン。二日酔いのときに食べるモヤシ入りの爽やかなヘジャンクク……。ちょっと考えただけでも数十種の鍋を日常的に食べているんじゃないかと思う。 韓国で鍋が好まれるのは、もちろん冬が寒いからというのもあるが、大人数でワイワイ食べられるからだろう。会社で昼食にコンビニ弁当を独りで、という光景はほとんどない。時には10人以上連れ立ってお店で食べる。そして韓国では、この店ならこの料理、というのが決まっている専門店が多い。冬になるととくに示し合わせないままに皆でぶらぶら歩き、その足取りは自然と鍋の店へ続く。日本から来たばかりの頃はどの店もいけると思っていたが、次第に美味い店というのが決まってくる。そういう店に限ってさりげない佇まいをしていて、いつも人が溢れているように見える。 いいなと思うのは、鍋を食べる作法が基本的にフリースタイルであることだ。日本でいう「鍋奉行」的な、鍋を仕切る人は出てこない。ひとたび鍋が火にかけられると、みな粛々と鍋を囲み続ける。あらゆる人が鍋の下に平等なのだ。 いっぽう、鍋を楽しむ姿勢についてはどん欲と思わせるところもある。近所の店で辛カルクックス(辛いうどんの鍋)を食べさせるところがある。まずコンロにかけられた鍋には、並々と野菜(春菊、しめじ、ジャガイモなど)だけが入った辛いスープが入っている。そこに薄切りの牛肉をさらし、しゃぶしゃぶ式に食べる。次に本丸であるうどんが厳かに投入される。スープがたっぷりとしみ込んだ煮込み野菜とうどんをいただく。そこで終わりでも十分に満足だが、さらに最後に鍋のスープを少しだけ残しいったん空け、その場で米や卵やごま油を投入してチャーハンを作る。カリカリになった香ばしいチャーハンに、取っておいたスープで水分を与え、さらさらといただく。これが抜群に美味い。世阿弥的にいうところの序破急が鍋の中に渦巻いており、そこでは様々なストーリーが奏でられるのであった。
執筆:水島己(風待茶房 編集) |
執筆:風待茶房編集部
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