• 第22回大会テーマ「天国のキッス」

『天国のタイトル』
執筆:松久淳


私の数少ない(微妙な)ヒット作の最初の3文字が同じだからという理由で、国民のほとんどが知ってる(本物の)ヒット曲でコラムを書け、と言われた小説家のせつない気持ちはぐっとこらえます。ぐっ。

 しかしダジャレなオーダーがタイミングがよかったのが、いま私、その「天国の本屋」という小説のシリーズ4作目をほぼ書き上げ、秋からの連載開始を待ってる時期でもあったのでした。そして目下の問題は「サブタイトル」がまだ決まってないこと。

 つくづく「天国のキッス」っていいタイトルだなあと思う。「天国のキス」ではなく「天国のキッス」じゃないとダメというのは誰もがわかると思うけど、後からならなんでも言えますよの最たる例でしょう。

 普通は「天国のキス」が思い浮かんだ段階で、「こりゃダメだろう」と即却下(でしょうきっと)、しかしそこに「ッ」だけ足して名作にしてしまうのは、素人じゃ無理ですよ奥さん。奥さんに話してたのか俺。どこの奥さんだ。

 そんなわけで、先ほど4作目のサブタイトルが決まってないと書きましたが、こんなお題をいただいたんだから、「天国の本屋のキッス」にしちゃってもいいんじゃないかなと思ってみたり。怒られないかな、いやきっといろんな人に怒られるだろう、というかキスシーン出てこないじゃん、だめじゃん。

 そういえば「抱きしめられて気が遠くなる」→気管までしめつけて呼吸困難で失神?→「私生きてるの?」と、いらん深読みをしたのは中学3年の春。そんな童貞丸出しだった私も、来年は天国に手が届きそうな不惑。



執筆:松久淳(作家)
7月に「天国の本屋〜恋火」の文庫、
8月に新刊「ラブかストーリー」が発売。
■matsuhisa.com


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  • 第22回大会テーマ「天国のキッス」

『祖父と祖母の佐田啓二の思い出』
執筆:牛久保 暖





祖母は佐田啓二のファンだったらしい。けれども、佐田啓二のファンだったというのは本人から聞いたわけではなく(中村歌右衛門と本木雅弘については聞いたことがあったけど )、それは子供の頃なんとなしに佐田啓二の息子である中井貴一の話を母としていたときに、ポロッと聞いたのだった。

東京オリンピックの開催を秋に控えた1964年 8月17日に佐田啓二は山梨の別荘から東京に戻る際に交通事故で亡くなってしまう。そのとき祖母は一家で箱根を夏休みの旅行で訪れていたらしい。その道中にカーラジオで訃報を知り、祖母はショックを受け、楽しいはずの旅行ですっかり落ち込んでしまい、その様子を目の当たりにした祖父がちょっと機嫌を悪くしてしまったと。

祖父は母が大学生のころに亡くなってしまったので、僕は会ったことがない。その人となりを想像するしかなく、人づてにいろいろと聞く中で( 豪放磊落なエピソードが多い)、この話はそんな祖父のその日その瞬間の気持ちがリアルに再生されて、忘れられない。

高校に入って、小津の『お早よう』で初めて佐田啓二を見たときは、この人がそうかと、話だけ前から聞いているそれなりに馴染みのある人に会ったような気がしたのだった。確かに男前かも、こりゃお祖父ちゃんも分が悪いな〜、と。ちなみに佐田啓二が亡くなったとき、中井貴一は 三歳。中井貴一は父親のことを覚えているんだろうか、とふと思ったりもする。



執筆:牛久保 暖(会社員)
気付いたら深夜オフィスの住人になってました。
弊社にオフィスグリコの導入を希望します。


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  • 第22回大会テーマ「天国のキッス」

『1秒間に24回キスをする』
執筆:batayam



 心のなかに天国みたいな部分がある。


 空想や妄想、祈りとも違う透明な部分。そこは逃げ帰るところではなく、池に落とした自分の斧がふつうの斧なのか確かめるようなところでもない。例えば好きな音楽の波で魂の洗濯をしている時、その天国みたいな部分から涙が生まれくる。感動や衝動、癒しとも違うもっと透明なつよいところ。


 そんな透明なところの玄関に、ある日、一匹のネコがやって来た。

 「にゃにゃにゃぁー!」

 心の三半規管に響く声。『こまねこ』は、澄ました顔してやって来た。





 雨の小さな映画館。『こま撮りえいが こまねこ』公開初日。現在もWEBで配信中の『こまねこ-はじめのいっぽ-』をすりきれるくらい観ているのでなんとなくこまねこワールドをわかったつもりでいた無防備なボクの心臓は、長編的こまねこぱんちでノックアウト! だった。タオル素材のハンカチがくたっとするほど号泣していた。嬉しかった。おとなになってもネコのぬいぐるみが動くアニメ映画を観ながら泣いてしまうことがとても嬉しく思えた。

 『こまねこ』にはほとんど台詞がなく直接心に感情を投影してくる。ともすれば感情のレコードの回転数が決まっているような暮らしのなかで、こんなにも体温を感じるネコの映画は初めてで、何時しか心が笑顔になるんだ。じっさい劇場を出た人たちが「思っていたよりおもしろかったー!」と笑顔で話していた。同感。少なくともボクの風船はアドバルーンと化し、その後しばらく「『こまねこ』観ました?」が口癖になるほどだった。数日後に「観たよー」という知人は「batayam泣くことたぁないよー」と言いながら、笑顔でボクにこう告げる、「でも、思っていたよりおもしろかったー!」


 芳村真理さん以来の浸透率で日本中に「どーも」という言葉を伝えたであろう『 NHKキャラクター どーもくん』のスタッフチームが織り成す長編こま撮りアニメーション。1秒間に24コマ動くネコの手を借りて、寝不足気味のボクの心は再生される。…トクン、トクン、

 にゃにゃにゃぁー!

 碧空に空蝉の声こだまする朱夏。



 『こまねこ』は1秒間に24回、ボクの心にキスをする。





ちなみに『こま撮りえいが こまねこ』のDVDはもうすぐ発売!(2007/7/25)です。でもボクはただのこまねこファンです。怪しいせーるすまんじゃぁございやせん。


執筆:batayam(ばたやん)
詩・文・絵・写真・デザインする人。/ 生きているから想うんだ、毎日に魔法をかけていこう。「みえない静電気でみえるものがくっついてゆく。」「心のエアコン下さい。」真夜中の子供、ばたやんの宇宙への落書き。お寝しなにご賞味下さい。『毎日に魔法をかけていこう』
http://www.berry-records.com/


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『天国と地獄 キッスとビンタ』
執筆:高森ゆうき




最近、音楽活動が仕事になり2ヶ月が過ぎようとしています
環境の変化に少し戸惑いながら毎日何とかやっているつもりです。

仕事というだけあって毎日”曲”のことを考え考え
考え考え考え考え考え忘れてまた考え考え
ふと
”なんで俺お金もらえてんだろ?”
とか色々考えイッちょ前に悩んだりしている。

とはいえ時間の使い方は自由なので暇なんてものは大いにあります。

そんな時間を使った最近の天国


”スムージー”を作って飲む瞬間!

コレである。

スムージーとは凍った果物、氷、乳製品等をブレンダーでミキシングして作る
さっぱりしたシェイクみたいなものでたいへんおいしい!

以前新宿のとあるお店で飲んだのが忘れられず、
それ以来,新宿に行くと必ずそのお店に立ち寄り
ポイントがたまるたまる!
個人的には豆腐、豆乳を軸として作ったスムージーが好みです!
体にもいいし!言う事無し!
いろんな物、好きなものを入れて自分流にアレンジできるのが良い。

そして携帯で撮る!
コースターの色は?光は?背景は?ストローは付けるのか?
ちなみにスムージーはストローで飲んだ方がおいしいです。



では最近の地獄 は

曲が出来ない瞬間! 
コレです。



出来た時にはこんな地獄どこかに飛んでいくのですが
こいつがやっかいです、
只でさえ無い自信をご丁寧にさらになくさせてくれます、
書いているとそんな気分になってくるのでやめる事にします。

あとおまけに服の生乾き
コレは防臭できる柔軟剤で何とか解決できました!
ありがとうございます。

こんな事書いていると天国と地獄なんてそこらへんに
いっぱいありそうですね!



では最近のキッス

コレは”秘密”です

秘密のキッスです

どうでもいいけどキスよりキッスの方がかわいらしく聞こえますね
違いは
キッスは舌を入れないでキスは入れるそうです。



では最近のビンタ

コレは4年前ですね
あんまり最近ではないですね
下北沢で思い切り女性にぶっ叩かれました
自分で言うのもなんですがすがすがしい音立ててました。

こんな高森ゆうきですが
書いている曲は切ない曲が多いです
機会があれば聞いてみてください。



執筆:高森ゆうき(シンガーソングライター)
石川県出身。 2006年5月“陽当良好”3曲入りCDを自主のレーベルHAND TOOL RECORDSより販売。 ただ今、新しい音源を製作中。 現在ライブは月に2・3本 絶賛音楽活動実行中
■http://www.geocities.jp/takamorinomori/index.html


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『隣国のウィッス』
執筆:水島己




 日本語の「ウィーッス」ってどういう意味なんですか。

 この3年ほど、韓国と日本のスタジオでゲームを作っているのだが、最初の頃、韓国のスタッフによく聞かれた。言うまでもなく「ウィーッス」は日常生活でとてもよく使う言葉だ。

  いただきます→いたーきまっす→うぃーっす
  ありがとうございます→おりあーとっす→うぃーっす
  おつかれさまです→おつあ〜まっす→うぃーっす

 ということで、新しく入社した韓国人のスタッフは、歓迎会の席でまず「ウィーッス」を覚えることになる。変な言葉だが、最初のコミュニケーションには欠かせない。

 その事実すら忘れかけていたが、大学時代は第2外国語に韓国語を履修していた。「単位が取り易い」という安易な理由だったが、そのときさぼっていたツケがここに回ってきている。当時習った言葉で思い出せるのはのは、「(間違い電話に対して)何番におかけですか?」という言葉だけ。この先、この言葉が役に立つことはあるのだろうか?

 酒の席などで、変な外国語を教えてからかうのは、定番の遊びだ。でも逆に普通の言葉が覚えられない人もいる。そういうと他人事のようだが、自分がまさにそうだ。いまだにまともな韓国語が覚えられない。覚えたのは「お年玉ください」とか、「馬鹿犬」とかそんなのばっかだ。通訳のスタッフに恵まれすぎているのかもしれない。

 最近もバーで飲んでいて、店の女の子から韓国語で「韓国に来てどれくらいなの?」と聞かれた。とっさに日本語で「えーっと『3年です』ってなんて言うんだっけ?」と口走ってハッとした。韓国に3年居る人の言葉じゃないだろ……。

 韓国で一緒に働いているスタッフは、日本語の勉強に熱心でたいへん心強い。特に日本への出張なんかが決まると、がぜん熱心に勉強するので、社内で様々な日本語が飛び交うようになる。先日もスタッフの一人が、ブツブツと独り言のように日本語を暗唱していた。横を通りかかり、すれ違い様に言葉の断片が耳に入る。
 「おねがいです ずぼん かえしてください」

 彼は日本に何しに行くのだろうか……。


執筆:水島己(風待茶房 編集)
エディター/ゲームデザイナー。エディター/ゲームデザイナー。ネットゲーム制作のため、半分くらいをソウルですごしています。きたる7/21(土)、以前ここでも書いてもらったDJのCrystal君、そしてPeechboy君を呼んで、ソウルのClub VIAというクラブでTriple Houseというイベントを行います。興味のある方はぜひいらしてください!


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  • 第22回大会テーマ「天国のキッス」

「天国のキッス」
作詞:松本隆
作曲:細野晴臣
編曲:細野晴臣
発売 1983.4.27


『アイドルと前衛のキッス』
執筆:水島己


松田聖子13枚目のシングル、「天国のキッス」。ハワイを舞台に、中井貴一と共演した東宝映画『プルメリアの伝説』のテーマソングで、50万枚近くを売り上げるヒットを記録。チャートでは11曲目の1位を獲得した。

すでにイモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」でミリオンを記録していた、松本隆・細野晴臣のコンビとしては、初めての松田聖子のシングル。この3人はその後も「ガラスの林檎」「ピンクのモーツァルト」などのヒット・シングルを生み出した。

松本隆は、松田聖子の歌詞に、ある意識的な変化をもたらしていた。多くのアイドルが文字通り平面的な偶像を表象していた時代。「アイドルも歳を取るべきだ」という考えのもと、歌詞の中の女の子像は、さまざまな横顔を持つ、複雑な個性を獲得していった。それは、今日の“ツンデレ”的な記号化されたキャラクター性というよりは、感情のレイヤーが折り重なり、光と陰の部分を併せ持つ、生身の人間に近い感覚だった。

たしかに、青い海や南の島を舞台としたリゾート気分を猛烈に掻き立てるモチーフは、「青い珊瑚礁」「夏の扉」など、(松本が手がける以前の)初期・聖子ちゃんイメージを踏襲しているようにも見える。しかし、ここでの女の子像は、男子の前であえて“誘惑されるポーズ”を取るようなファム・ファタールぶりを、ガンガンに発揮しているのだ! いちアイドルから、時代を象徴する存在になっていった、当時の松田聖子の存在感の曲線を裏付けるようである。

ところで、YMOの細野晴臣が手がけ、「テクノ歌謡の名曲」とも呼ばれるこの曲には、いつもあるエピソードがついて回る。1983年当時、社会現象を巻き起こしたYMOは、確信犯的に「歌謡曲」というテーマにたどり着き、作詞に松本隆を起用してシングル「君に、胸キュン。(浮気なヴァカンス)」を発表。チャート番組で1位を獲得することを狙うも、惜しくも2位に終わった。1位を阻んだのは、他でもない、松本・細野自身が手がけた「天国のキッス」だったのだ。

当時の“松田聖子”という舞台は、毎回1位を取ることが義務づけられるという、極度にプレッシャーの高い、辛い職場だったようだ。細野は近年のインタビューでも、「自分に順番が回ってくるのが嫌だった」と語っているが、それを毎回繰り返していた松本隆の心境は、想像を超えるものだっただろう。

ただ、曲そのものはそのプレッシャーを微塵も感じさせない、むしろ前衛性の高い内容になっている。絶えず転調を繰り返す、80年代のアイドルのシングルA面としては十分すぎるほど変わったコード進行だが、それをシレっとさわやかに歌いこなす松田聖子の表現力は驚くべきものがある。特に、“おしえて ここは何処?”のラインでは、歌詞とコード進行が多重に絡まり、不思議な浮遊感覚を生み出し、一瞬にして深海へトリップさせる感覚を与える。詞、曲、アレンジ、歌が絶妙のバランスを保ち、ある種不思議な社会性を持つポップミュージックとして成立した、時代を象徴する曲である。


執筆:水島己(風待茶房 編集)
エディター/ゲームデザイナー。「天国のキッス」は松田聖子さんの曲の中で、特に好きな曲です。高校生だった1990年頃、アシッドハウスと並列で聞いてもぜんぜん新鮮に聴ける!と感動し、繰り返し聴いていたのを覚えています。


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