「ハイティーン・ブギ」
作詞:松本隆
作曲:山下達郎
編曲:山下達郎
発売:1982/6/30
『松本隆の描いた少年の物語』
〜近藤真彦 「ハイティーン・ブギ」〜
執筆:まこりん
一同、起立、礼、着席。それでは、今日の講義をはじめる。
今日のテーマは「ハイティーン・ブギ」。近藤真彦の七枚目のシングル、同名の"たのきん映画"の第4作の主題歌として大ヒットした。82年6月30日発売。最高位1位。売上60.7万枚(オリコン調べ)。また、歌謡曲を書かない山下達郎が作曲、編曲に起用されたことでも話題になった。これは近藤・山下両氏のプロデューサーであった当時のRVCの小杉理宇造氏の手引きによるものである。
82年、もっともレコードをセルした男性アーティストが近藤真彦であった。リリースしたシングルの全てが50万枚を超える大ヒット、オリコン年間チャートベストテンには3曲がイン(「ハイティーン・ブギ」「ふられてBANZAI」「情熱・熱風・せれなーで」)、またTBS系『ザ・ベストテン』において、82年、近藤真彦の楽曲がベストテンにインしなかった週はわずか1週しかなかった。80年年末にデビューして早々男性アイドル勢の頂点に立った近藤真彦、その年、最もヒットした彼のシングルがこの「ハイティーン・ブギ」である。
当時、近藤の楽曲の詞は松本隆と伊達歩(伊集院静)の手によるものがほとんどであった。 アルバムでの比重はほとんど同じであったが、特にシングルに関しては松本隆の起用が目立っていた。松本隆はデビュー曲「スニーカーぶるーす」から91年「デスぺラード」まで12曲近藤真彦のシングルの作詞を担当し、そのうち9曲で1位を獲得している。松本隆にとってこの数字は、松田聖子に次ぐものである。ヒットという面で言えば、近藤真彦と松本隆はこと相性がよかった。これには、秘密がある。
松本隆の描いた男性キャラを大別すると、だいたいみっつにわけられる、と私は思う。
ひとつは、都会的に洗練された、けれども本質は骨太で硬派な大人の男性。これは、寺尾聰や南佳孝、大瀧詠一、佐藤隆、桑名正博などで表現されている世界。
もうひとつは、繊細で傷つきやすい翳りのある美少年。原田真二やあるいは少年隊やKinki Kidsなど、男性アイドルで表現されるのは、主にここ。
そのふたつは、実にシリアスで品があって、気障すれすれなんだけれども、それが自嘲に転ずると、コミカルで愛嬌のある三枚目の男になる。これは二つの世界の裏面みたいなものだね。これらはC-C-Bやイモ欽トリオなどで表現されている部分。
つまり、松本隆の男歌ってのは、その全体が、線の細い美少年が、傷ついたりつまづいたり、時には道化を演じたりしながら、ロマンあふれる大人の男のダンディズムへと辿りつく、そんなひとりの男性の成長物語となっているといってもいいのだ。
で、話を近藤真彦の歌に戻すと、このみっつの男性像が絶妙な形でブレンドされていることに気づくはず。
松本隆が近藤真彦で表現したツッパリ路線といっていい数々の作品は、彼が男性アイドルで主に描く、線の細く傷つきやすい少年のあふれるパトスの世界を基調としながらも、そのどれもが骨太で硬派な大人の男性を予感させる。そして、ほんのちょっとだけコミカルで愛嬌があるのだ。
「未来を俺にくれ」
こんな男義あふれる啖呵を切りながら、どこかツメが甘い。マッチの歌は、カッコいいけれど、なぁんかスキがあるのだ。ここが肝。
思春期というのは、振り返ると、輝かしいと思う反面、どこか気恥ずかしいとも思うもの。その微笑ましさが、芥子粒のようにパラパラっと散っているのだ。
これが松本隆が描いた近藤真彦の世界の良さであり、また近藤真彦という歌手の良さでもあった。この時期の近藤真彦は、けっして上手い歌手とはいえなかったけれども、彼だからこそ、この若い時だけ許される暴走、傷つかずにはいられない青い傷みを十全に表現できたといえるんじゃないかな。
もちろん、その後の彼は当然のごとく大人への階段を猛スピードで駆けあがることになり、87年には「愚か者」でレコード大賞の栄誉に輝く。そして松本隆も大人の男の色香漂う歌手となった彼へ「Made
in Japan」「デスぺラード」などを提供することになる。
というところで、紙数も尽きまくったところなので、今日の講義を終える。個々で近藤真彦の「ベスト」を聞いてしっかり復習するように。
それでは、一同、起立、礼。
執筆:まこりん(フリーター)
「正社員になれず派遣社員やフリーターが多い僕らの世代を近頃はロストジェネレーションというのだとか。なんか語感だけはカッケぇな、おい。
願わくば本家アメリカの"失われた世代"のごとく、僕らの世代にとってのヘミングウェイやフィッツジェラルドが表れて欲しいものだが、どうやら僕らの世代は失語症のようだ。
なぜそう言い切れる? なぜならこの僕がそうだからだ。こんなにあちこちで好き勝手になことを書きちらして失語症などと不思議に思うかもしれない。でもそれとこれはまったくの別物なのだ。僕はまだ僕の絶望を表す言葉を手にしていない。これを手にしない限り僕は永遠に言葉を失いつづけているのだ。」
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