• 第16回大会テーマ「ポケットいっぱいの秘密 」

『私のポケットの想い出。』
執筆:安めぐみ



 ポケットの思い出って、いっぱいある。

 子供の頃おつかいで親からお金を渡され、ポケットに千円札を入れて外に出ると、なんかドキドキした。責任重大のような、ものすごいものを預かったような、誰も私のポケットを狙ってなんかいないのに、いつもポケットを手で覆って気遣いつつささーっとお店まで走って行ったりしてました。

 学生の時 は、今までの人生で一度しか自分からきちんと告白というものをしたことがないのだけど、その時、 生まれて初めて書いた男性への手紙を、渡すまでずっとポケットに入れて、その人が通りかかるのを 待ったりしたなぁ。結局その時書いた手紙の内容は色々悩んで悩んで何度も書き直したあげく、 「ずっと見てました。」の一行。今考えると、ちょっと怖い。。 自分が貰ったら、、やっぱり ちょっと怖い。もっとましな文章は思いつかなかっ たのだろうか。でも、ほんとにいつもずっと見てたなぁ。

 初めて一人暮しした時はものすごく淋しくて、何か飼おう、とハムスターを飼った。 名前は丸くてころころしてたのでコロ。当たり前だけ ど小さくて声は出さず、感情は分かりにくいけど、 帰ってくると、暗い部屋から一生懸命ゲージ の中を走り回ってるカラカラ、、という音が響いて きて、そのたびにホッとしました。 ちょっとキッチンに行く時とか、上着のポケットにコロをひょいっと入れて一緒にお家の中を動き回ったり。 今は家にはウサギがいて、ポケットには入らないけど、こんなバックにひょいっと入れて出掛けてます。


執筆:安めぐみ

1981年12月22日生まれ
趣味:音楽鑑賞、体を動かす事
好きなこと:長風呂、水泳、うさぎ

TV◆NHK「ご近所の底力」「POP JAM」TBS「ピンポン!」レギュラー出演
CD◆リリー・フランキーとのユニット、リリメグ「おやすみ」EPICレコードより発売中

安めぐみ公式HP◆http://www.harmonypromotion.co.jp/yasu/
リリメグ公式HP◆http://www.lilimeg.com/


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  • 第16回大会テーマ「ポケットいっぱいの秘密 」

『ちょっと前進』
執筆:河野 力



今年、自分の作りたかったモノが、やっと作れた。『LocoRoco』というゲームだ。

企画がなかなか通らなかったり、いくつかのプロジェクトに参加しているうちに、会社に入って9年も過ぎてしまったけど…、まずは夢が1つ、叶った。

『自分の作ったモノで世界中の人を笑わせたい』
という、自分で言っててちょっと恥ずかしい子供の頃からの夢だ。

でも、自分のデザインしたゲームを作る為に9年もかかるなんて、学生時代にわかっていたら、間違いなくゲームの仕事は諦めていたと思う。きっと大好きなスノボを仕事に選んでいただろう。プロライダーとか、スノボスクールの先生とか、海外のスキー場で働くとか…。あとは…室内に人工雪のジャンプ台を作って、そこで遊びながら酒が飲める危険なバーを作るとか…。酔っ払ってるからコケてもへっちゃら!みたいな。

今まで辛い状況が何度かあって、会社を辞めそうになったけど、ここまで頑張ってきてよかった。ゲームが作れただけじゃなく、ゲーム中の曲の歌詞を書いたり、その曲がカラオケになったり、予想外の楽しいことが起こった。

それに想像していた通り、自分の作ったゲームで、子供達や、世界中の人を笑わせるのは最高に楽しい! 今もこの地球のどこかで、僕のゲームを遊んでくれている人がいるのかも?と思うと、嬉しくなってしまう。

さて、この次。これから何を作ってくのか、そろそろ決めていこう。

会社からは、『作れ!』と言われてるものがあるけど、それだけじゃまずい。新しくてインパクトあって楽しいゲームを、出来るだけ早く沢山作って、もっと世界中の人を驚かしたい。

他にも、玩具や、不思議なデザインの家具も作りたいし、数年後にはハワイに会社も作りたい。海岸沿いに会社を建てて、ジェットスキーで通勤したり、みんなで大きなジャグジーバスに入りながらブレストしたり、会社の床がガラス張りになっていて水中の魚が覗けたり…。あ〜楽しそう…。

LocoRocoの制作をしている間に、色々なアイデアが溜まってしまった。それに、今まで作りたいものが作れなかった反動なのか、アイデアが次々と湧いてくる。まずは一度、ポケットの中から沢山溜まったアイデアを全部出して、並べてみよう。

それから次の目標を立てればいいかな。


執筆:河野 力(ゲームデザイナー)
『LocoRoco』のゲームデザイナー。 今年こそはスノボに行きたくて、2週間くらい会社休んでカナダの山にこもれないか、企み中。
URL: http://www.jp.playstation.com/scej/title/locoroco/


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  • 第16回大会テーマ「ポケットいっぱいの秘密 」

『ポケットは出窓』
執筆:永友聖也



つげ義春さんのマンガに『散歩の日々』という作品がある。つげさんのマンガのなかで僕が 一番好きな作品なのだが、この作品の登場人物は常にズボンのポケットの中に300円を入れて 歩いている。300円あればコーヒーも飲めるし、タバコも買えるし、時には電車にだって乗れる、 という訳だ。 たった300円を持って歩いているだけなのに何だかかえって自由でいろんな事ができる気がして、 一時僕はこの主人公をまねてサイフも何も持たずにポケットに300円だけを入れて散歩していた。 だが僕の場合はすぐにフラフラとコンビニなどに立ち寄ってしまうクセがあり、そこで新しい 食玩『20世紀マンガ家コレクション松本零士編』などを見つけるとアッサリなけなしの300円を 注ぎ込んでしまうので、そうなるとこう一文無しになってしまい心穏やかに散歩を続ける事が できなくなってしまうのだ。 そこでよし、ちょっと多めに1000円、いや食玩を大人買いする場合を考えて3000円ポケットに 入れておこう、となると今度は気分が出ないのだ。やはり300円というのがいいんですね。 そんな訳で散歩の達人への道はまだまだ遠い僕ではあるが、『ポケット』というものが好きで 何でもかんでもポケットに入れて歩いてしまう。ちなみに今現在の僕のポケットに入っているものは、
(1)ギターのピック(2)パスネット(3)お守り(4)サイフ(5)小銭(6)レシート
(5)、(6)あたりは明らかにコンビニ帰りの痕跡を匂わせるが、これらに加え時には ティッシュ、漢方薬、文庫本といったものが加わる。 何か、ポケットというのは単なる収納の道具ではなく、自分の好きなものを詰め込める気持ちの 出窓みたいな感じがするのだ。ぬいぐるみ置いちゃったりする感じ。サボテン育ててみたりとか。 最近、齢30にして初めて携帯電話を持ったのだが、これなどサイズ的にはポケットに入るのだが どうにも色んな機能やデータが多すぎて「出窓に置くにはどうもな」という気がして、どうしても バッグに入れて持ち歩きたくなってしまう
やっぱりポケットには300円ぐらいが良く似合うのだ。

執筆:永友聖也(キャプテンストライダム)
キャプテンストライダムのVOCAL&GUITAR担当。最新シングル『恋するフレミング』好評発売中。 11/18(土)3ヶ月連続となるebisu LIQUIDROOM公演、いよいよクライマックスです。 詳しくはオフィシャルサイトまで。
URL: http://www.captain-a-gogo.com/


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  • 第16回大会テーマ「ポケットいっぱいの秘密 」

『丸いゼ!』
執筆:関 陽子



 最近、太り始めて、腹がポッコリ出てきた。トコトコ歩いているとき、考え事をしてるとき、たらふく食べたとき、ついついお腹をタヌキの要領で叩いてしまう。あるいはさすってしまう。ポンポンポン。丸いのっていいね、不思議と安心するね、でも20代女子なんだわー、わたし、と叩きながら思う。腹が出ちゃあいけない。いや、ほんとは勝手なんだけど。

 かねてから憧れている人物で、画家の小林路子さんという方がいる。もともと挿絵画家として幻想的な心象風景などを描かれていたらしい。しかし、いまから20年近く前、きのこという存在に出合い、仕事の内容は一変する。同じ幻想的でも実体のあるきのこにすっかり魅了され、今となっては「きのこ専門」の細密画を手がけつつ、きのこにまつわるエッセイを執筆するようになったという人物だ。あだ名がすごい。「仙人」という。仲間から「霞を食ってきのこを描いている」と見られているかららしい。でもさ、この方女性ですよ? 仙人て。腹が出てる程度の騒ぎじゃない。

 私も、昨年、とあるきっかけできのこの世界に足を踏み入れた。20何年もの間、無趣味だった私が、ある日啓示が降りたかのようにきのこに取り憑かれ、おおげさでなく、いまは毎日がきのこ一色だ。講座に行く。研究会に入る。公園や山に行き、きのこを採る、そして撮る。家に帰って図鑑で調べる。生えないシーズンは、きのこグッズを買ってしのぐ。きのこは普段、土の中で「菌糸」という形で眠っている。しかし、「あ〜子孫増やしたい!」ってなると、ああやって、胞子をばらまく器官として突如発生するのだ。菌の花だ。胞子が雨に濡れないように、カサ状になっているものが多いが、色も形も様々で、日本では4000〜5000種くらいあるという。しかし名前がついているものは一部に過ぎない。私は、きのこ特有のあの、丸くてユーモラスな形に心奪われている。「生きています!」と言いながら挙手をしているような真摯さがある。植物のお花と機能は似ているけれど、きのこにはもっと原始的な生命のパワーを感じる。お花が蜜や花粉で虫を引き寄せたりと、他者の目線を意識したり、効率に気付いているのに比べて、きのこはただただ、それぞれ変な形をしながら「生きています!」と言いつつ胞子をばらまいている。きのこの色や形についてはまだほとんど謎が解明されていないようだ。

 でも、どんなにきのこが好きでも、今、私は会社員で、「仙人」にはなれない。きのこを生業にしたらどんなに幸せかと妄想するけれど…。しかし、きのこが楽しくなってから、モテを急激に意識しなくなったことは間違いない。きのこのカサや、自分の腹の丸みのほうがおもしろい。むしろきのこにモテたい。

 まあ、そんなこんなを考えながら、今度はパーカーのお腹についているポケットに手を突っ込んで歩く。こういうポケットだと、腹の膨らみは目立たない。ポケットの中でこっそり叩いたりさすったりすりゃいい。この、「パーカーのポケットに手を突っ込む」というスタイルは、背中が丸まり、世の中に不満があるような、毎日がつまんないような、その時だけちっちゃな不良のような気分になれて、私は好きです。

執筆:関 陽子(編集業)
最近休刊した雑誌の編集部から単行本の編集部に異動しました。毎日勉強の日々です。


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  • 第16回大会テーマ「ポケットいっぱいの秘密 」

『吉田さんの小さな手紙』
執筆:batayam




 ドラえもんほど便利ではないが、ボクもひとつだけポケットを持ってる。


 当時のことを例えるなら透明度の高い海。水深約1.5m。なんとなく息苦しく塩分の高い空気が肌に沁みる。それでも窓の隙間から届く太陽の手はまろやかく、揺れる海草は風を描き、行き交う魚の鱗は宝石のように眩ゆみながら、ゆっくりだけど確実に未来のほうへ世界はまわっていた。そんな中学生時代。一通の小さな手紙をもらった。

 吉田さんという女の子からこっそり手渡された手紙の冒頭は「これは強くなるおまじないだよ」。なんとやさしい魔法みたいな言葉だろう。

 透明というゴーグルと沈黙というスイムスーツで海を泳いでいたボクの姿が彼女には甲羅を忘れた亀のように不安げな生き物にみえたのかもしれない。糖分の高い水が胸の砂浜に満ちてくるその手紙の二行目には「我は虎」と綴られていた。

 人目をはばかるようにボクに手紙を渡すと何処かに行ってしまった彼女に御礼も言えないまま制服の胸ポケットに折れないように大切にしまった手のひらほどの小さな手紙。「我は虎」。ポケットの中にお守りが生まれた。

 旅の何処かで手紙の現物そのものは失くしてしまった。おまじないの三行目以降はなんと書いてあったろうか。この先続く旅の空でおまじないの続きの言葉を自分で探しださないと吉田さんに怒られてしまう。それより今のボクはあの頃より少しは強くなれているだろうか。

 心がのび太くんになりそうな時ドラえもんの道具のようにポケットから空に透かしてみる吉田さんの小さな手紙。吉田さんに今なら大きな声で言える、ありがとう。感謝してます。ボクはこうして今も元気に人生の波風を楽しむことを覚えながら泳いでいます。

 海は美しいです。2006.10.晴天


執筆:batayam(ばたやん)
詩・文・絵・写真・デザインする人。/ 生きているから想うんだ、毎日に魔法をかけていこう。「ぶたやん、川は時速何キロで流れているのだろうね。 」「先生、心に鳥を飼い始めたのです。」真夜中の子供、ばたやんの宇宙への落書き。お寝しなにご賞味下さい。 『毎日に魔法をかけていこう』 http://www.berry-records.com/


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  • 第16回大会テーマ「ポケットいっぱいの秘密 」

『仮眠室は人間交差点』
執筆:水島己



 誰でもお酒にからんだ失敗談は、心のポケットにしまっておきたいものだと思う。しかしあえてそこから教訓を得ようとするとき、人生はより豊かになると信じたい。

 以前僕が勤めていたゲーム会社には、12畳ひと間のじゅうたん敷きの仮眠室があった。4年ほど前、会社の飲み会を早めに抜け、仕事をした後、仮眠室で寝ていた。寝る前にまぶたの裏に浮かんだのは、飲み屋での同僚Tの姿だった。普段は物静かなプログラマーである彼は、酒を飲んで絶好調だった。その夜最後に見た彼は、謡いながら地元の阿波踊りを舞い、刺身盛りに添えられた巨大な練りわさびを口に放り込んでいた。

 ふと目が覚めたのは、2次会から戻ってきた同僚Tが、部屋の端で不穏な音を立てたからだった。部屋には僕と彼しか居なかったのだが、嫌な予感を感じつつも、寝たフリを続けていた。彼は10分ほど悶えた後、ついに胃袋に溜まったファンタジー(練りわさび添え)を仮眠室にドロップした。

 うわ〜ん!!と心の中で泣きそうになりながら電気を付けると、彼はまだ悶えながらも寝ている。仕方なく救急車を呼んで病院に行ってもらい、この世の終わりのような気分で仮眠室の床に新聞紙をかけた。あとは総務のYがなんとかしてくれるだろう……。

 翌朝、総務のYと同僚Tと僕(みんな同期入社だった)は、床に広がった見事なグラフィティの前に立ち尽くしていた。
「どうすんだよこれ。」
引きつった顔を隠せない総務Yをその場に残し、同僚Tと僕はダッシュで逃げ去った。すまん……でも僕は悪くないんだよ……。

 先日、4年ぶりに仮眠室の2人に偶然会った。2人は会社を辞め、それぞれの道を歩んでいた。迷惑をかけた同僚Tは無職のままだった。後片付けをした総務のYは、どう頑張ったのか大きなIT会社の社長になっていた!

 無職と社長。

 この、まるで童話のような古典的オチから、僕は大きな教訓を感じずにはいられない。そしてイソップのようにこの話を語り継いで行くことを使命と感じている。ポケットにしまっておくにはもったいない出来事だ。


執筆:水島己(風待茶房 編集)
エディター/ゲームデザイナー。ネットゲーム制作のため、韓国によく出張してます。先日、韓国で発売されたペ・ドゥナの写真集に興奮し、4冊買いました。


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