『胸キュン。ちょっとGAIZIN視点』
執筆:野中モモ

昨年末から、久しぶりで東京に暮らしている。それまで6年半ロンドンにいた。その間も一年に一度ぐらいはここを訪れていたけれど、腰を据えて体験する日本はやはり新鮮だ。
近所のスーパーに立ち寄るだけでいちいちキュンキュンしてる。
おせち料理におもち各種が片づいたら七草セット、鏡開きでお汁粉用の小豆、間髪入れずに節分の豆が並ぶ頃には既に怒濤のチョコレート攻勢、あっという間にひなまつりでホワイトデー。
いまは土をつけたままの筍が並んで、その傍らにはアク抜きに使う米ぬかパック(一回用)が用意してあるの。
忙しいなあ、高度情報資本主義社会だなあ。
細やかなサービス、無限のバリエーション。それって凄いことなんですよ日本(というか正確には東京)のみなさん!!! 思わず声が大きくなる。
そして先月は、真夏の雲のようなボリューム感でもくもくと咲き乱れる桜の花を、7年ぶりに目にして圧倒された。イギリスにも桜はあるけれど、あんなのはなかなか無い。
昨晩キュンときたのは、フローリストの店先に並び始めた芍薬の花。
もうすべてどうでもよくなるような甘い香りが大好きで、一年のうち限られた季節にしか味わえないものだから、毎年、できるうちにできるだけ楽しみたい。
イギリスでも売っていたけれど、一般的な街の花売りだとバリエーションは、ピンク・赤・白ぐらいだった。そしてそれらは全て「ピアニー」でしかなかった。
しかし先日通りかかった東中野の店には、5,6種類が入荷していて、それぞれに物語を暗示させるいかした名前が示されているのであった。
「白妙」「花やぐら」「湘南」「ポーラウェイ」。それらを好きに組み合わせて「芍薬バイキング」だって。ちなみに「薔薇バイキング」もありました。
YMOの「君に、胸キュン。」に登場するのは、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」に例えられるようなゴージャス美女。たぶん。伊太利亜の美人女優みたいな。「麗人」って感じ。
そういう優雅で華麗でアダルトで過激な淑女的ビューティーにうっとりするのと同時に、アスファルトの裂け目をひろげて伸びた雑草が花をつけている様にもキュンキュン来ちゃう。
このコラムのために、散歩の途中で見かけた白い花が愛らしかったな、あれどこだっけ、と、あいまいな記憶を頼りにカメラを持ってうろうろしたのだけれど、結局見つからずじまいだった。
日本の5月は忙しい。