『眠りのトンネル』
執筆:ハナレグミ(永積タカシ)

ブルーのケンメリが夜中の中央高速をスッとばしている。
僕はリアウィンドーの下にティッシュと一緒に寝っころがって
白い月と次々におっこちてくるオレンヂ色のライトをぼんやーりながめていた。
小学生の頃 毎年夏休みに家族で出かけていた軽井沢旅行の帰り道、
僕はきまってこの場所で寝かされていた。
そして そこで数日後にはじまるグッタリ感いっぱいの
始業式や授業の事を思っては「あ〜っ このまま地球終わってくわ」とか
「外国人になりたいなぁ」とか考えていた。
カーステレオからは僕の大好きな(なつかしのフォーク&ポップス)という
カセットが流れていた。この中には沢山の別れの曲が入っていた。
(イチゴ白書をもういちど)・(木綿のハンカチーフ)・(白い冬)
そして、最後にかかる(岬めぐり)の「僕は〜どうして〜生きてゆこう〜」
というフレーズの所でいつも涙があふれそうになっていた。
未来を変えられない無力感に歌詩と歌声の世界が絡みあい、
切なさの蜜にトロトロに溶かされると、それは大きな快感に変わってゆくのでした。
<切なくなるほどに気持ちいい>
ふと下の後部座席を見ると兄がスースー寝息をたてて眠っている。
前の座席には父と母が、無言で座っているからなのか、僕には二人が他人どうしに見えた。
タイヤが高速道路のつぎ目をふみ越える音が心臓の音に聴こえてきて
僕はだんだん眠くなってしまう。寝たら軽井沢の旅が終わっちゃう!
一秒でも長く旅していたいと思って気合いで起きてようとするのだけれど・・・・・。
「タカシ!!」と呼ばれて目を覚ますと、そこは自分の二段ベッドの上、
ネムリのトンネルを越えた僕には、どうにもならない日々がまたはじまっていたのでした。