• 第11回大会テーマ「眠りの森」

『眠りのトンネル
執筆:ハナレグミ(永積タカシ)



ブルーのケンメリが夜中の中央高速をスッとばしている。
僕はリアウィンドーの下にティッシュと一緒に寝っころがって
白い月と次々におっこちてくるオレンヂ色のライトをぼんやーりながめていた。
小学生の頃 毎年夏休みに家族で出かけていた軽井沢旅行の帰り道、
僕はきまってこの場所で寝かされていた。
そして そこで数日後にはじまるグッタリ感いっぱいの
始業式や授業の事を思っては「あ〜っ このまま地球終わってくわ」とか
「外国人になりたいなぁ」とか考えていた。
カーステレオからは僕の大好きな(なつかしのフォーク&ポップス)という
カセットが流れていた。この中には沢山の別れの曲が入っていた。
(イチゴ白書をもういちど)・(木綿のハンカチーフ)・(白い冬)
そして、最後にかかる(岬めぐり)の「僕は〜どうして〜生きてゆこう〜」
というフレーズの所でいつも涙があふれそうになっていた。
未来を変えられない無力感に歌詩と歌声の世界が絡みあい、
切なさの蜜にトロトロに溶かされると、それは大きな快感に変わってゆくのでした。
<切なくなるほどに気持ちいい>
ふと下の後部座席を見ると兄がスースー寝息をたてて眠っている。
前の座席には父と母が、無言で座っているからなのか、僕には二人が他人どうしに見えた。
タイヤが高速道路のつぎ目をふみ越える音が心臓の音に聴こえてきて
僕はだんだん眠くなってしまう。寝たら軽井沢の旅が終わっちゃう!
一秒でも長く旅していたいと思って気合いで起きてようとするのだけれど・・・・・。
「タカシ!!」と呼ばれて目を覚ますと、そこは自分の二段ベッドの上、
ネムリのトンネルを越えた僕には、どうにもならない日々がまたはじまっていたのでした。

執筆:永積タカシ(ミュージシャン)
永積タカシ=ハナレグミ、FUNKバンドSUPER BUTTER DOGのボーカリスト。 現在は原田郁子(クラムボン)、オオヤユウスケ(ポラリス)と組んだコーラス バンドohanaとして活動中。
HP:http://www.five-d.co.jp/hanare/



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  • 第11回大会テーマ「眠りの森」

『姫
執筆:尾上 紫



「眠りの森」、と言えば、私にとっては幼い頃読んでもらった童話の『眠れる森の美女』。 これにはじまり、まだ物心つくか、つかないうちに、たくさんのお姫様物語をさんざん読み尽くし、 いつしか姫願望が人一倍強い子供になってしまいました。 まぁそれは、幼少の自分の写真、まわりの人から聞く幼少の自分の話からして、かなり狂っていたと思われます。

姫といえば、ティアラですよ。
でも、そんなもの、あるわけありません。そこで、ちいちゃな私は考えたわけです。 金の折り紙で、冠(もどき)を作って、さらにはキラキラして、ちょっと透け感のある風呂敷を見つけてきて、 その折り紙の冠を貼付けて、頭にかぶる。まさにそういう写真が残されています。 驚くほど、ご機嫌な私がそこにいるのですよ。はっきり言ってコワイです。

もちろん、それだけじゃありません。姫には宝石が必要なのですよ。 母親の宝石箱から、勝手に取り出したり、知り合いの方が奇麗なアクセサリーをつけていたら、 とにかくつきまとって、離れない。とにかくキラキラしたものが大好きでした。

そうしているうち、日本舞踊のお稽古していれば、奇麗な着物をきせてもらえて、 かんざしのたくさんついた鬘をかぶって、奇麗にお化粧をしてもらって、それもある意味お姫様な感じですから、 それが嬉しくて踊っていたようなものです。 おまけに、ちょっと踊れば、ものすごく褒められるので、すっかり調子に乗り、まんまと日本舞踊家になりました。

でも、実際は、『姫』になることは結構稀で、だいたい何かの化身とかが多い。蛇、鷺、藤、桜、もしくは少年。 ・・・予定とはちょっと違うんだけどなぁ。でもそれも楽しい。 子供の頃、憧れていたのは、とにかくゴージャスで奇麗なお姫様。そして悲劇の末に王子様が救い出してくれる。 定番だけど、そういうお姫様に憧れていた。でも今は、ちょっとそれじゃ物足りない。 今だったら、私も剣を持って戦いたい。傷つきながらも、最後は戦い抜いて、私が王子様を助けてあげたい。
そんなお姫様に憧れる。

今でも、キラキラしたものを見ると、心がわくわくしてくる。だから、左手にダイヤモンド、右手に剣、刀もしくは拳銃 みたいなお姫様になってみたい。
私の姫願望は今も終わることなく、さらに大きくなるばかり。

執筆:尾上 紫(日本舞踊家・女優 )
近況/5/13(土),14(日)13時開演、愛宕山古典芸能祭2006に出演 (NHKプロモーション主催)※13日はNHK教育で生放送
HP:http://www.onoe-ryu.co.jp/yukari/



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  • 第11回大会テーマ「眠りの森」

『昼寝の森
執筆:永友聖也



『昼寝をすると夜中に眠れないのはどういう訳だ』とは井上陽水さん『東へ西へ』の 一節だが(それにしても必殺のフレーズだなあ)、『昼寝』という響きには単なる 睡眠とは一味異なったニュアンスがある。
習慣としての夜の睡眠は、時として非常に億劫だ。
『夜は寝るものだ』という当たり前の事がなんだかプレッシャーになって、一日の 疲れを心地良く癒してくれるはずの睡眠を面倒臭く感じる事があるのだ。

例えば長編もののマンガ、そうだなあ楳図かずお著『漂流教室 全5巻(小学館 スーパー・ビジュアル・コミックス版)』をうっかり夜中の12時過ぎに読み始めてし まったとする。2巻の半分ぐらいまで読み進めた時点で時計は1時を回っている。
「いかん、もう寝なきゃ」と思いつつ、続きが気になって仕方が無い。「怪虫の正 体も気になるし」「でもなあ、もうこれで読むの5回目くらいだしなあ」などと悶々 としつつ結局徹夜でラストまで一気読みして号泣、「ああ、またやってしまった」と いう罪悪感に苛まれつつ明け方眠りについた経験は誰にでもあるのでは無いだろうか。

これが昼寝だったら、まあ読みたかったら読めばいいし眠たくなったら途中で本を放り出して眠ればいいだけの話だ。
夜の眠りに関しては『睡眠不足』『不眠』といったネガティブワードがついて回るが誰も『最近昼寝不足だなあ』などとは言わない。とても自由だ。
考え様によっては昼寝の方がより睡眠としての質が高いと言えるのでは無いだろうか。

『眠る』という同じ行為に『昼』という言葉が付くだけでこうも印象が変わるのだ。
同じく個人的にちょっと面倒な『入浴』に関しても『昼風呂』と言われると俄然入る気が湧いてくる。

これを他の事にも応用しない手は無い。
なんにでも『昼』を付ける事で、ひょっとしたらこれまで面倒臭かったあんなこと こんなことが楽しくこなせるかも知れない。よーし。
『昼仕事』
あれ、普通だな。
どうやらもっと具体的に言わなければダメみたいだ。面倒臭い事をイメージして、
『昼通勤ラッシュ』
かなり気楽だ。例え朝でもマインドは昼通勤ラッシュ。
『昼トイレ掃除』『昼ビデオテープの整理』『昼年賀状の宛名書き』
なかなかいい感じだ。おなかも空いてきたしそろそろ
『昼ごはん』
あ、一周した。

とにかく、同じ事をするにも呼び方で随分気分が違うと言うという白昼夢の様なお話。

執筆:永友聖也(キャプテンストライダム )
キャプテンストライダムのVOCAL&GUITAR担当。新曲「風船ガム」が 4月4日から始まる全国テレビ東京系アニメ「銀魂ーぎんたまー」の エンディングテーマに決定。全国ツアーもいよいよスタート。各地 売り切れ続出で熱いです。ヤバイです。扇風機まわってます。
http://www.captain-a-gogo.com/



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  • 第11回大会テーマ「眠りの森」

『森に眠るもの』
執筆:高宮孝治



中学生の頃の話。

放課後、僕らは友だちと連れ立ってよく森に出かけたものでした。住宅街の中、神社を中心としてこんもりと木が生い茂る烏森(からすもり)。そこが僕らの目指す場所。目的は神社にお参り……のはずはなく、そこに存在する「あるモノ」を探しに行くことだったのです。

僕らが森で日々探し続けたモノ。それは「エロ本」です。まだ生えそめし中ボーだった僕らは、エロを求めて「森」に行っていたのですよ!エロの狩猟採取ですよ!

僕を森に誘ってくれていたのは、クラスの同級生M君でした。

ビデオもインターネットもなかったあの時代、中学生男子にとっての最重要課題「エロ」へのアクセスは本当に狭き門でした。ナローバンドでした。エロの意味もたいしてわかってないくせに欲望は張り裂けんばかり。しかしエロ本を本屋で買うには勇気が必要。

そんな状況下でいつも自ら購入役を買って出ていた同級生のM君は、仲間内から多大なリスペクトを得ていました。勉強ができるわけでもない。スポーツも得意でない。しかしエロに関する知識だけはクラスでナンバーワンで、男子からは絶大なる信頼を得ている男。そんなM君が発見した究極の狩場が件の「森」だったのです。

なぜかその森にはエロ本がたくさん落ちていました。木の根元。落ち葉の下。森のあちこちに、夜露に濡れてしんなりと微笑む女神たちが存在していました。「フツーに本屋とかで見るよりエロいべ?」M君はいつでも僕らの一歩先を歩いていました。

中ボーにとっての最大の危険行為は、家にエロ本を隠しもつことでした。親にお宝を発見されたあげく「先生、うちの子がいやらしい本を持っていたんですが…」などと授業参観後の懇談会で暴露されてしまった悲劇の人物を僕は知っています。

そんなリスクの回避策としても、森での採取は非常に有効だったわけです。というか、そういうリスクの結果、男たちがやむなくお宝を投げ捨てる場所が、たまたまその森だったのでしょう。捨てたれた男たちの無念。そしてそれを発掘する若き勇者たち。はからずも森は男たちの欲望を分散共有する場所として機能していたのでした。ある意味winny?

そんな魅惑的な「森」でしたが、時がたち、いつの間にか足が遠のいていったのはなぜだったんだろう。先輩たちや友だちの武勇伝が耳に入ってきたりして、なんとなくエロ本という「バーチャル」から「リアル」へと目指すものが移行していったのかもしれません。 時は流れて四十も間近。僕は「おたま」という毛糸のおたまじゃくしキャラクターを普及させる活動をしております。よく、おたま写真を撮るのにいいスポットはないかと、公園やなんかをウロウロしていたりするんですが、そんなとき、ふとあのころの「森」の感覚がフワーっとよみがえってきて、人知れず顔が火照っていたりするのは内緒ということでひとつよろしくです。


執筆:高宮孝治(あみぐるみ作家/ゲームプランナー)
最近はネットワークゲーム仕事過多の日々。優雅なニットワークライフはいつの日に…。
http://www.otama.tv/


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  • 第11回大会テーマ「眠りの森」

『ナポレオンとフラミンゴ』
執筆:batayam



今まで見た夢で一番嬉しかった夢ってなあに?という話になった。
とある男の子は「ガンダムのコックピットに乗って操縦したことかなぁ。」
とある女の子は「空を飛んだ夢かな。本当に飛んでいるみたいだったの。」



陽射しを受けてまどろむ窓と、時々揺れる電車の内。
身体は起きているが頭は寝ているようなときがウトウトならば
あら、あの人、とうとう読んでいた本落としちゃっても寝ているよ
と、周囲が囁かんばかりに熟睡しているのがOFF状態のばたやんだ。

通いなれた線路の揺れを隅々まで記憶した身体。
フラミンゴのごとく、つり革にぶらさがり、泥のように眠る。


かのナポレオンは馬の上で眠れるほど馬術に闌けていたそうだが
しかし、つり革につかまり眠る術はなかなか進歩の兆しがない。


先日も、何かの拍子に、揺れる車内
熟睡している手がつり革から離れ
目の前に座るサラリーマンのおじさまの頭を
ピシャリ! と全体重をのせて叩いてしまった。
すみませんっ! すみませんじゃすまないくらいの音である。
おじさまのバーコードで手のひら認証。。などと不謹慎に思ったりしながら

気まずくなり、車両を乗り換え、つり革につかまり、
ふたたびまどろむフラミンゴ。
何かの拍子に、つり革を軸に身体が180度回転、
目の前の座席のおばさまのヒザの上にちょこんと座ってしまった。
すみませんとあやまらなきゃいけないところ
ねぼけたフラミンゴはこう言ったのだ「こんにちは」。



今まで見た夢で一番嬉しかった夢は「家族旅行する夢」かなぁ。
本当に夢みたいな旅行だったんだ。


寺内貫太郎一家スペシャル特番を観ながらそんなことを想い出していた。


執筆:batayam(ばたやん)
詩・文・絵・写真・デザインする人。/隣のアパートのたもとに菫の子と、コンクリーツ塀の肩越しに沈丁花の春の香。


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  • 第11回大会テーマ「眠りの森」

『森があっぱよ』
執筆:水島己



 仕事で韓国のソウルと東京を行き来するようになって、1年半くらいになる。いまだに韓国語はさっぱり話せないのだが、じっと言葉を聞いていると、覚えやすい単語とそうでない単語があることに気付く。単純に、日本語っぽい発音は覚えやすいのだ。僕の好きな「シオナダ」という言葉は、「体がほぐれて気持ちいい」みたいな感じの意味で、暖かいスープなんかで一息ついたときに言う言葉らしい。それを聞くたびにまったくどうでもいいのだが、「汐灘」という漢字が頭の中に浮かんでいる。「ミソガアルンダワヨ(味噌があるんだわよ)」を東北訛りで言うと、「笑顔が素敵ですね」という意味で伝わる。これもいい言葉。それから「頭」のことは「モリ」と言うのだが、「モリガアッパヨ」が頭が痛い。こうした言葉には、なにかすごく親近感が持てる。

 ソウルで一緒に仕事をしているスタッフの一行が日本に遊びに来たとき、せっかくだからということでお酒を飲みに行った。人生初キャバクラだったのだが、忙しくてまったく落ち着けなかった。自分は韓国語が全く話せないはずなのに、行きがかり上、韓国のスタッフとお店の女の子の通訳という立ち回りになってしまったのだ! でもそのときはじめて気付いたのだが、さすがに普段一緒に仕事をしている仲間なので、日本語と片言の英語、「汐灘」「味噌があるんだわよ」などの偏った得意の韓国語を総動員することで、なんとか意味が伝えることができるっぽいのだった(くだらないことしか話してないからだけど)。隣に座っていた韓国のスタッフは、女の子のメールアドレスをゲットして嬉々として帰国して行った。これでチームワークが深まったかも……、とホッと一息ついた夜だった。

 その思い出が覚めやらぬ一月後、そのスタッフが「チームに合わないから」と急に辞めてしまった! そのおかげでいまだにソウルに行きっぱなしの生活が続いている。あの一晩の自分の頑張りはなんだったのだろう……。「モリガアッパヨ」。今なお頭の痛い出来事である。


執筆:水島己(風待茶房 編集)
エディター/ゲームデザイナー。ネットゲーム制作のため、韓国によく出張してます。この前飛行機に乗り遅れて、5時間くらいヘコみました。


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